◇再生式短波ラジオ◇

物置に転がっていたVFOのケースに0-V-2を組み込んでみました。


 旧式のVFOの残骸には大きなダイアルが付いており、このケースを使ってラジオを作ることにしました。シャーシの大きさと穴数から再生付きの直接検波型とし、コイルを切り替えて短波も受信する型式としました。


VFOのケースを再利用

立派なダイアルが付いているのでコンパクトな3BANDを


 普通は中波の受信に360PFのバリコンを使います。このバリコンを使うと受信周波数の範囲は約3倍となるので、最低同調周波数を550KHzとすれば550X3=1650(KHz)まで受信出来ます。
 同様に短波でも最低を3.5MHzとすれば最高は10.5MHz、また10MHzとすれば最高受信周波数は30MHzになります。
 ただ、スイッチ切り替え式にするとスイッチと配線の関係で、どうしても浮遊容量が大きくなってしまい予定通りの周波数範囲は取れません。また、周波数範囲を広く取ると、短波帯では同調が困難になります。そじて、バリコン容量が大きいところの周波数は感度が悪く、再生が掛かりにくいなどの欠点があります。
 これらの欠点を補うために短波では、360PFより最大容量が小さいバリコンが有利ということになります。今回はこれらを考慮して、430PFバリコンの羽根を抜き260PFにした2連バリコンを使うことにしました。この羽を抜き取ったバリコンは昔細工をしたものです。下記はバンド毎のバリコン使用セクション等を表します。

  ・10.5~18MHz――Bセクション100PFを直列に入れました。
  ・ 3.5~10MHz――Aセクション260PFをそのまま使用
  ・0.55MHz~1.65MHz――A・Bのセクションを並列に使いました。


斜め後ろから

昔、羽根を抜いた2連バリコンを使いました。


 前項でも述べましたが、コイルを切り換える方法にはスイッチ切り替えとプラグインコイルと呼ばれるコイルを球と同じように差し替える方法とがあります。
 スイッチ切り換え方式は、操作が簡単ですがどうしても配線が長くなり配線の浮遊容量が増えます。そして使っていないコイルをショートしておかないと受信している周波数の感度が悪くなる場合があります。
 そのため、2バンドなら2つのコイルを直列につなぎ、短波受信の時は中波のコイルをショート、中波受信の時は両方のコイルを使います。3バンドになるとショートバー付きのスイッチが必要になります。今回はショートバー付きのスイッチを使わず、使用していないコイルとバリコンを切り換えて使用しているコイルへの影響を無くしました。
 そのためか、切り替え部が増えてしまい大変面倒になりました。もしも中波と短波1波の2バンドだけとするならば、中波と短波のコイルを直列に繋ぎ、短波受信時には中波の同調コイルをショートし、中波受信時は両方のコイルを使うという方法をとれば切り替えが大変楽になります。


コイルの様子

自作した短波帯のコイル


 短波付きの再生ラジオは、中波だけのラジオより低周波の増幅度を大きくした方が聞き易いため低周波増幅を1段増やします。これにより雑音やハムなどが増えるので、検波管には雑音の発生が少ない球を使うなどの注意が要ります。
 更に感度を良くするため検波管のプレート負荷に200Hのチョークコイルが使われます。しかし、チョークコイルの配置に気をつけないと電源トランスからの誘導でハムが入ります。この防止対策として電源トランスに銅版のショートリングを付け、チョークコイルと離しましたが、完全ではなかったようで少しハムが入ってしまいました。
 このラジオのケースは、アマチュア無線の送信機のVFO用を使いました。加工済みの穴をそのまま利用したので配置は今ひとつ良くありません。廃品利用ということでご了承願いたい。
 このラジオは、再生コイルの巻き数を最適値にしないと感度が悪くなります。再生は同調コイルの一部をカソードに接続して、検波管のスクリーングリッド電圧を加減して行います。再生にバリコンを使う方法は、再生コイルの巻き数がすこし違っていても、再生バリコンの容量を変えて再生が起きればよいのですが、スクリーングリッド電圧を加減して行う場合は、最初 検波管のカソードを直接アースしておき、スクリーングリッド電圧を加減して音量が最大になる電圧を求めます。そしてスクリーングリッド電圧が最適値の電圧で再生が起きるように、再生コイルの巻き数を決めます。実際に再生コイルの巻き数を決めるには、同調コイルの1部から取り出すのは大変面倒なので、別に再生コイルを多めに巻き、少しずつ減らす方法が容易です。また、短波の同調コイルは太い線を使いますが、再生コイルの線は中波と同じ太さで構いません。


●回 路 図●


 中波のコイルは、既製品の並四コイルの改造です。同調、アンテナコイルはそのま使用し、再生コイルは全部ほどいて同調コイルのアース側から同じ方向に10回巻き、検波管の最適スクリーングリッドで再生が起きるように、少しずつ回数を減らしました。再生コイルの巻き数は予想外に少なくなったので、中波の再生コイルだけはタップ式にしました。
 その他の短波コイルは、同調コイルを巻き、デップメーターで周波数を合わせてから、アンテナコイルと、再生コイルを巻きます。検波管のプレート負荷にチョークコイルを使うと6AU6の場合は、再生コイルの回数があまりにも少なくなり、巻き数の加減が難しくなりました。
 検波管をチョークコイル負荷と抵抗負荷とした場合とを比較すると、同じ入力ではチョークコイルの方が約3倍の出力がありました。そして最適なスクリーングリッド電圧に幅があることが分かりました。しかし抵抗より高価なこと、電源トランスからの誘導を防ぐのが困難になります。
 調べてみると、雑誌に6SJ7をグリッド検波でプレート負荷に抵抗とチョークトランスを使った場合の比較がありました。チョークトランスを使うと、抵抗負荷に比べて約4倍の出力があるそうです。やはり、トランスの値段とハム誘導を考えると抵抗の方に軍配が上がりそうです。



 その他、使用部品の注意点として、再生用の可変抵抗は高価ではありますが、24型以上、できれば30型のものを使うと安心です。というのもこの可変抵抗には大きな電流が流れ、あまり小型の物はすぐに不良になるからです。
バンド切り換えに苦労しましたが、再生型とはいえなんとか実用になるラジオが出来ました。しかし、遠距離の放送を聞こうと欲張って大きなアンテナを接続すると、今度は分離が悪くなり地元放送がダイアル全部で聞こえてきます。


<2006.12.01>