◇飛3号もどき、全6F7のラジオの製作◇

全て6F7をつかった6球スーパーを製作しました。


 昭和20年前半の頃にもしも、球の人気コンテストがあれば上位間違いなしの球は、Ut-6F7でしょう。人気の理由は、当時では珍しい3-5極の複合管であることと、軍用球の放出で広く出回ったことです。このUt-6F7は、特に陸軍の無線機に多用されています。飛1号無線機の受信部はUt-6F7を6本使った高2、中2のスーパーで、低周波にはUt-6F7の3極部を使い、終段はPPとなっています。飛3号の受信部はUt-6F7をメタル管にしたMC804A/US6F7Aを5本使った高1、中2のスーパーで、低周波にはMC804Aの5極部と、トランス結合の3極部のPPでした。


◇オール6F7を用いた高1スーパー◇

入れ物は自作です。結構、手間取りました。


 以前からこの構成でラジオを作ってみようと思っていました。そのままの回路では作るのが大変なので、かなり手抜きの飛3もどきとなりました。
構成、要点は次のとおりです。
 ①3極部を使うために5本の6F7が必要なので、高周波増幅と、中間周波増幅は非同調にしました。
 ②中波帯だけなので周波数変換には6F7の5極部混合、3極部発振にしました。5極部だけで周波数変換とすれば、球が1本省略できますが、前回この方法を使ったところ感度が悪く今回は別の方法にしました。
 ③原型では、といっても配線図を見ただけですが、5極部のプレートにトランスが入っております。これはインダクタンスが大きいトランスが使われているようで、飛3は放送受信用ではなく、音声が聞こえれば良いなどの理由で使われたのでしょう。普通の低周波トランスを並4のUZ57のプレートに入れてみましたが、感度音質ともに悪くて放送受信には実用にはなりません。


セット後部から

グリッドキャップも自作です。


 ④規格表では、6F7の3極部は最高Ep100Vです。これでは低くPPでも出力が少ないのでEp180V、G1,-5.1 4V、RL30KΩ,PPの条件で、出力は約0.3Wでした。
 ⑤非同調の高周波増幅では、プレート抵抗が小さいので利得は殆ど無く、ピーキングコイルを入れてみました。「電波科学1950/5」の記事ではピーキングコイルを入れると、6D6を使い利得8倍とのことです。6F7は6D6よりGmが小さいので利得は更に小さくなります。
 ⑥今まで、出力が小さい球には、小型の出力トランスを使いましたが、古い松下のカタログを見ると重量150gのトランスの損失が-2dbと書いてあり、出力の約半分が消えてしまいます。出力トランス解説の記事を拾い読みすると、出力トランスの損失は、巻き線の抵抗と書いてあり、流れる電流から0.1mmで充分ですが、断面積が約4c㎡の鉄心に0.16mmの線を巻きました。3000t巻く予定でしたが、2000tで巻き枠に一杯になってしまったので巻き線はここまでとしました。インダクタンスは4.3Hです。
 ⑦コイルは自作です。古いラジオ雑誌には、コイルの巻き数はカットアンドトライ、などと書かれていましたが、空芯のコイルは巻き数の加減が大変です。コア入りボビンも適当なものが無いので、最近はトランジスタ用のバーアンテナのコアを使っています。長さ6cm,10mmφのコアを半分に切り、最初からの付属のアンテナコイルはそのまま利用します。コイルの端が少しコアから外れたところで210μHになりました。
 発振コイルは、コアに紙を巻き付け、その上に線を巻きます。0.1mmの線を巻きますが、空芯ボビン、直径25mmのデータと同じ回数を巻くと同じインダクタンスになり便利です。そしてコイルをほんの少し移動させると、インダクタンスは大きく変わります。組み立てた最初、電源を入れるとバリコンが殆ど入ったところでJ0AR,1053KHZが入ります。調べてみると局発が598KHz+455KHzで1053KHzを受信でした。


◇回 路 図◇


 ⑧グリッドキャツプは幅8mmの銅板を丸鉛筆に巻き付けて作ります。
 ⑨6F7のグリッドバイアスは5極部が-3V、3極部が-5Vなので、カソードには5V、DAVC電圧に+2Vを加えて5極部が-3Vになるようにしました。作る前に、6F7の3極部のPとG1のそれぞれを検波に使い、6SQ7の2極部と比較しました。そして感度が悪いPをDAVCに使いました。
 ⑩出力トランスから6F7のプレートへの配線は、シャシ上を通りソケットの近くで3極部のプレートへ配線します。
 ⑪できあがったラジオの感度は、標準の5球スーパー並でAVCが6F7,4本に掛けてあり、また6F7のカソードへは3極部のプレート電流が流れているので、5極部のグリッドに-電圧が掛かっても、カソード電圧が極端に小さくならないので、AVCが良く効くのが良い点です。ただ、プレートに180V加えた6F7の3極部の寿命が心配です。


◇シャシーの裏◇

OSCコイルの端子は接着剤で固定してあります。


 今回は以前、ナス管の高一を製作したときに使用したパネル付のシャーシが保存に便利なので、今回真似をしてみましたが、側板と縦横を組み合わせるのに1mmの誤差でも駄目で大変手間取りました。


<2006.04.14>