簡易型のエミッション測定器を製作してみました。
測定器を作る場合、一番の問題点は校正です。そして、球試験機の場合は各球毎のデータが必要です。これを作ろうと思ったきっかけはというと、以前にオートトランスの話題が出たので、遠い昔(1940年代)のことを思い出しました。日本がアメリカとの戦争に負けたのが1945年、その後の数年は電力事情が極端に悪く、夜になると電球はフィラメントがぼんやりとオレンジ色になっているだけで、光は殆ど出ません、恐らく60V程度まで電圧は下がっていたことでしょう。 |
今回製作した簡易型真空管試験機
この時代にラジオ屋に行くと、箱一杯に不良球が入っており、幾度か貰ってきました。その中の幾つかは、昼間に我が家のラジオに入れるとよく働く球がありました。しかし、夜になり電圧が下がるとこれらの球は音が出なくなります。こういう球がエミ減球です。
そこで規定の電圧を掛けて電流を100%とする。次にヒーター電圧を下げて、どの程度電流が減るかを見てエミ減の球を見つけることにしました。 これではデータ不要と思いましたが、どれだけ減れば不良かの見分けが必要となります。とりあえず手持ちの球で42と80をTV-2で調べてみました。 TV-2は測定球のデータがパーセントで出ます。42は68%、80は63/68%が合格ラインです。しかし普通のラジオでは合格ライン以下でも充分働きますから、いろいろな%の球のデータから、メーターを10目盛とすれば、10〜6が合格、6〜4が?(何とか使える)4以下は不合格、としました。 |
KT-301、国産で比較的新しいタイプ。
これもあまり評判が?
これはアメリカ製の古いエミッションチエッカー
このチエッカーUYとUyソケットも付いています
球の試験器にはいろいろありますが、今回作ったエミッション測定器はあまり評判が良くありません。ガス電流がある球、電極間のショートは判らない、Gmとエミッションは比例しない、G1に+の電圧を加えるので球が不良になる、などです。しかし簡単に作れること、テスターでヒーターの導通を見ただけでは判らない真空度不良、ヒーターが暖まるとカソードとショートする球、そしてエミッション不足の球はGmも小さいので、エミッション測定器で合格すれば使える可能性がある球ということが判ります。
既製品のエミッション測定器で6EH7を測りましたらG1には約20mA流れました。そこでG1に掛かる電圧を下げて実験してみましたが、ある程度電流を流さないと、エミッションの良否が判りません。 ラジオ技術1953/FEBに「アマチュア用送信管の良否はどうして見分けるか」という記事があり、その中の2E26のデータは「22.5Vの乾電池をG-K間につなぎ85mA以上ならまだ使える、4秒以上電流を流すと球をオシャカにする」と書いてあります。そこで、今回作った試験機には押しボタンスイッチを付け、電流を読みとる時間を短時間に行えるようにしました。ただし、整流管は球をオシャカにする心配は、まずありません。 |
ピン接続はラグ板で行うようにして、トップのGは大型ワニグチで・・・
今まで何回も球試験機を作りましたが、大変なのが球のベースピンとG1,K,Hなどとの接続です、スイッチを使うとこの部分に金と場所を取られます。そこで今回はラグ板に1-9までの足からの線を引き出し、接続は鰐口クリップを使いました。G1は球の頭につなぐ場合があり、大型のものを使いました。
測定法
メーターを10目盛とすれば、10-6が合格、6-4が?(何とか使える)4以下は不合格。 |
◇回 路 図◇
スイッチ
SW-1:球のヒーター電圧降下用、入力を100Vから75Vに下げます。 SW-2:ヒーター電圧設定用 SW-3:押しボタンスイッチ、押したときだけON SW-4:4回路2接点、エミッション測定と電極ショート測定用、スライドスイッチ トランス
○PT-2:1.4V,2.5V,5V-2A,6.3V-1A,12.6V-0.6A,19,25,30V-0.2A,50V-0.15A
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参 考:42,TV-2では68%以上が合格
◇裏 面◇
トランスはソケットの下に付けてある。
<2006.07.04>