MJ誌に投稿した記事から

◆空間電荷方式の電池式ラジオ◆

 MJ誌上で201Aのレフレックスラジオや戦時中の球を使ったラジオなどの記を見て、自分も何か球式のラジオを作ってみようと思い色々と考えておりました。
 ある日、49を用いたスぺ一スチャージモードの単球ラジオの回路(第1図)を見て、早速試作してみました。
 スぺ−スチャージ管は空間電荷管ともいい;グリッドが2つある4極管ですが、グリッドの使い方が通常のスクリーングリッド4極管である24、35等と異なっています。
回路図(弟3図)を見るとよく分りますがコントロ−ルグリッドとフィラメントの間にもう一つのグリッドがあり、このグリッドをスぺ一スチャージと言います。この型式の球は,電極数からは4極管ですが動作は3極管と同じで、スぺ−スチャージグリッドの効果により普通の3極管よりも低いプレート竃庄で充分に動作します。このような点からスぺ−スチャージグリッド管は電池ラジオに適しています。
 我国でスぺ−スチャージグリッド管として生産された壌はUX及びUY111BやUY111などですが、現在では入手は困難です。尚この型式の球は戦後自動車ラジオ用として傍熱型のMT管が作られています。戦後のラジオ雑誌でRH2や6C6などのG3が外部に出ている5極管のG3をコントロールグリッドとして、G2とG1をスぺ−スチャージグリッドとして使った例を見た事があります。スぺ−スチャージグリッド管として作られた球でない普通の受信管ではGlに+の電正を加えて電流を流して使用するのでその損失が問題になります。

 これから使用する49は、本来B級出力用の球なのでGlの揖失も一般の受信管よりは大きく、型も42や80と同じST14型で、将来UY111Bが入手できたときは、GlとG2の接続変更だけで用いられるので好適です。(第1表)
 ラジオを組み立てる前に、まず手持ちの49を3本と中古のUY111Bについてプレート電流とスぺ−スチャージグリッド電流を測定してみました。(第2図)


 当然49は、本来のGlをスぺ一スチャージグリッドとして、G2をコントロールグリッドとして用います。この測定結果からも49はB電圧は6V、フィラメント電圧は1.4Vで充分なので単一乾電池1個をA電池として用います。尚この状態ではフィラメントは暗い所で見ても赤くはなりません。
 この受信機の組み立ては簡単ですが、現在市販されていない部品の入手方法が一番問題です。コイルは自作しました。直径36mmのべ一クライトボビンに外経0.27mmのエナメル線を第3図のように捲きました。アンテナコイルは、当地は名古屋の放送局から約40km離れており図の捲き数で適当でしたが、放送局に近い場合は招き数を減らした方が良いでしょう。このラジオは再生がうまくかからないと実用になりません。
 再生コイルの捲き数が交流式の並4コイルよりも多くなっていますが、B電圧が低い場合はこの値が適当です。もし組み立てて動作させた場合に、再生バリコンの容量を減らすと感度が増す場合は、コイルの接続を反対にします。3極管のグリッド再生検波の増幅度は、アンテナ入力×同詞回路の電圧比×グリッド検波非再生式の拡大率×再生式の倍数=アンテナ入力×4×2.5×40という計算式があり、この受信機の増幅度の大部分は再生回路であることが判ります。実際に受信した場合、アンテナの良否で変りますが、再生バリコンの容量を減らしていくと放送は殆ど聞こえなくなります。

 アンテナは、0.002μFのコンデンサーを付けて、電灯線の一端から取り電灯線アンテナとしています。 レシーバーは感度の高いものが必要でクリスタル型を使いましたが、電磁型のものでもインビーダンスが高いものならば使えます。
 B電圧は、色々変えてみましたが、9Vと6Vでは音量に殆ど変化がなく、1.5Vまで下げても動作しました。このあたりがスぺ一スチーャジグリッド管の特長でしょう。A電池の極性は重要で+と−を間違えると感度は非常に悪くなります。
 部品の取り付けは、木板上の組み立てと似た方法として、1mmのアルミ板をコの字型に曲げ、普通のシヤシーとは逆向きに使用しました。(第4図) 球のソケットは、直径6cm、高さ1.5cmの鉄の筒に取り付け、この筒をシャシーに固定しました。

      〔参考書〕
 1)やさしいラジオの作り方
  古沢匡市郎 誠文堂新光社
 2)高級ラジオの作り方 同上
 3)The Golden age of Radio in
          the home p.85