◇ビクター6R75の修理◇

 これは戦前の超高級品です。交換球もないので飾っておくといわれていましたが、飾っておくとしても作動した方がなお良いと思います。ところが、このラジオは何故か我が家に舞い込んできました。
 当時、普通の家庭では購入することが出来なかった6球スーパーです。私も使ってみたかったのですが、とても手の届くような代物ではなかったと思います。


戦前の超高級品 ビクター6R75

魔術師によって復元された外観


 入手したときの外見は、煤でかなり汚れていたと思います。復活専門家というか、ラジオを新品のように変える魔術師のようで、届いたときに箱は綺麗になっていました。シャーシは油と煤に覆われていましたが、配線を調べながら部品をはずして掃除を試み、なんとか普通の中古品程度までに出来上がりました。
 シャーシも綺麗に出来たと思いますが、戦後のスーパーでないことから回路が解らなくなるといけないということのようで、中身は簡単に掃除してありました。
 これはそのとおりで、ITFも普通のスパーとは違い戦前の回路はどのよになっているか興味もあるところです。


シャシ裏の様子


修理に取りかかる前の裏面、殆ど改造されていないようです
下部に見える円筒形のものがIFT


 早速中身を見てみると、部品は抵抗とコンデンサーの一部交が換されていました。しかし、殆どが原型のままで、球も2A7,80の2本が戦後型であり、他は刻印がありましたので最初からのものと推測できます。
 平滑用のコンデンサーですが、2個付いていたブロック型のペーパーコンのうち1個が生きていたのには驚きました。4μFが2個ですが、万が一壊れても抵抗の断線で済むようにと、低周波増幅管のデカップリングとRF、IF球のSGバイパス用に使うことにしました。


解体しながら調べた配線図


 【配線図】
 中身を解体しながら、作ってみましたが2A7の発振回路がカソードタップ式です。IFTは原形のままなので改造したとは考えられず不思議です。IF及びPA管は半固定バイアス方式となっていますが、このバイアス電圧の作り方も変っています。
 使われている抵抗はビクター特有のカラーコードで不明。抵抗値は実測値からの推定です。
 音量調整のVRは50KΩが付いていました。これは軸がローレットなので交換したようです。普通のラジオは500KΩが使われていますが、IFTも変わっていますのでなんともいえません。しかし、最初から50KΩなのかは疑問です。
 音質調整は、なんとOPTの2次側に巻いてある3次コイル式でNFBのON/OFFが使われています。戦前のラジオにNFBが使われていたとは大変驚きです。音質調整と電源SWは共用になっておりましたが壊れて使えないため音質調整部分は取り除き音質調整用の部分を電源SWとしました。


IFTとスピーカー

IFTの内部、右が初段、複同調、左は検波段、単同調


スピーカーに付いているトランスは平滑用チョークコイル


【構造】
 戦後のスーパーと比較して一番変わっているのはIFTで、2個ともシャーシ下部に取りつけられていることです。また、各コイルは3個とも直径約3cm程の小型シールドケース入りになっていることでした。
 OPTもシャーシ内にあり、ダイナミックSPに取りつけられているのはチョークコイルでした。今回、配線図には書き入れませんでしたが、このSPにはハム打ち消しコイルが付いています。SPのフイールドコイルを平滑用に使うと、ハムが取れませんが前段にチョークコイルが入っているのでハムは完全に消えます。
 バリコンが普通とは逆で時計回りで容量が大きくなるようになっています。その為ダイアルの糸かけで大変苦労しました。不良部品を取り替え、平滑コンデンサーは原形よりも容量が大きいケミコンに変えて一通り終了です。
 配線の点検後、スイッチを入れバリコンを回すと放送が入ったので驚きました。しかし、どうも音質が悪くあちこちとつつきましたが駄目であり、とうとうRF,IF球をカソードバイアスに変えることにしました。再度、電源を入れて様子を見ているとしばらくして放送が聞こえなくなります。聞こえなくなった状態で、発振バリコンに触ると再び聞こえるので2A7のG1に100Ωのパラドメを入れ対処しました。2A5へのバイアス電圧は−16Vあるのに、2A5のG1では−12Vになります。これは球を変えても同じ状態なのでグリッドの抵抗を200KΩに変えました。それでも電圧は少し変わります。ラジオを箱に入れ終えてから気づきましたが、これはソケットの絶縁不良ではないかと思いました。とりあえずそのままにしてありますが、いずれ確認しようと思います。


修理完了したラジオ(背面)


 【修理を終えて】
 調整をすると、さすがは高1付きです。感度が良く感心しました。しかし、戦前のラジオですから分離は思ったほど良くありません。これはIFTの帯域にもよるものと思います。
 テストオシレターに100-250KC のレンジがありますが、今までは使うこともなく今回、初めてこの175KHzのIFT調整に使いました。


<2005.12.08>