◇リムロック管を使ったラジオ◇

 リムロック管を使ったフィリップスの中古ラジオを入手しました。状態はかなり悪くどうも水に浸かったような感じです。
 形式はトランスレスの5球スーパーですが、周波数は短波だけの3バンドとなっていました。外国製のラジオですからこのような仕様になっていても変ではありませんが、我が国で使うとすれば何かと不便なラジオと思います。
 またBAND切替スイッチのレバーが折れ、接点も錆びて動きません。これは特殊な構造の為、再利用は出来そうにもありません。そこで思い切って中波のラジオに改造しました。
 付いている球を調べると出力管UL41でヒーターが45V、そして整流管のUY41は不良でした。この2本は手持ちの都合でMTの32ET5(32V),36AM3(32V)を使うことにしました。


◇改造したリムロック管ラジオ◇

周波数目盛も新たに制作


 リムロック管の外観は9本足のMTとよく似ていますがサークルが等間隔の8本足です。これではオクタル管のキーが折れたのと同じであり、どの向きからでもソケットに挿すことが出来ます。
 これを防ぐ為、球の側面にコブを設け、ソケットには特殊な金具が取り付けられています。つまり、このコブが差込ガイドの役割になるのです。
 調べてみると最初はベース側の金具にコブが付いていましたが、後には金具が無くなり球にコブが付くようになりました。この方式は抜けにくい等、振動に強い等の利点もありますが、製造工程やコストを考えるとあまり良いとは言えず、アメリカ系のMT管の方が優れていたといえるでしょう。


◇リムロック管◇

左側が初期のタイプ。球の下部にコブが付いています。


 リムロック管はヨーロッパで一時期作られましたが、我が国では殆ど普及しませんでした。しかし松下電器はリムロック管を輸入し、一機種だけラジオを作っています。それはPS-71という型名で昭和28年頃発売されていました。
 このラジオは、なかなかスマートな外観で当時ラジオ屋に飾ってあったのを見たことがあります。
 構成はUCH-41,UF-41,UBC-41,UL41,UY-41を使った5球スーパーで、ヒーター電流が100mAの球であり、ソケットを替えて当時のアメリカ系のトランスレス管12BE6などに交換することは出来ませんでした。


◇ナショナル PS−71◇

スマートなラジオですが、壊れた場合は球の入手が困難


 以前、私が入手したPS-71も同様であり、入手時はUY-41が不良でその他の部品は原型のままでした。恐らく球の替えが無いのでそのまま物置で眠っていたのだと考えられます。
 入手難の球を使ってある為、全部150mAシリーズに交換したものや、トランジスタラジオが入っているPS-71もあるそうです。このように球が切れたりすると球探しに相当な苦労を強いられたラジオだと思います。


◇改造したラジオの回路図◇

参考にしたのはナショナルのラジオ、コイルは自作


 改造にあたり回路はPS-71の配線図を参考にしました。PS-71はヒーターの合計が100Vよりも高い為オートトランス方式を採用していますが、今回は出力管に32ET5を使ったので直接100Vに接続出来ました。
 また当初はPA管36AM3のヒーターにタップが出ているのでこれをパイロットランプ使うつもりで規格表を探しました。ところがNECの規格表によると36AM3のヒーターのタップ はパイロットランプ用ではなく、プレート電流制限抵抗(またはヒューズ)として使うとありました。この部分は4Vでありヒーター電圧は32V管として使用出来ることになります。


◇参考にした回路図◇

簡単にいえばPAとRECTの球を変更したことになります。


 周波数変換のUCH-42はヨーロッパ型の6-3極管となっている為、発振コイルは12BE6などに使われるカソードタップ型は使えません。その為、既製のコイルは使えないので6A7のデータを見て巻きました。その他にダイアル板もBC帯の目盛が刻まれていないので取り外して新しく作りました。
 またシャーシを支える底板もありませんでしたので適当なものを見繕いカットして使いました。


◇関の孫六◇

改造ラジオの下の蓋に使った板


 孫六の屋号で知られる刀工、孫六兼元の伝統を引き継ぐという関の孫六
 この包丁は切れ味も良くスパッと切れます。これが入っていた箱を下部の蓋に使ったので、球も良く切れるのではないかと心配しています・・・・・

<2010.11.21>