◇短波帯でイメージ比を良くしたシングルスーパー◇

 以前、使わないというパネル付シャーシを頂きました。見てみるとラジオを作るには最適なスタイルですが、電源トランスのスペースが難しく、トランスレスとしてスーパーを計画してみました。
 しかし、普通のスーパーでは面白くありませんので、短波帯でイメージ比を良くしたラジオと決めて組み立ててみることにしました。


◇正  面◇

パネル付きシャーシを木箱に入れました。


 普通の中間周波トランス(IFT)は455KHzですが、このIFTを使った高周波増幅無しのラジオは、短波帯の10MHzあたりからイメージ比が悪くなります。
 トラッキング調整時に、SGの電波が910KHz離れたところで同じような強さで入り、どちらが本物なのか迷います。
 放送を受信したときに聞こえている放送がイメージの可能性もあります。また、受信時に910KHz離れたところに電波があれば混信してしまいます。 
 このイメージを防ぐには、中間周波を455KHzよりも高くすれば良いのですが、L・Cで作られているIFTでは周波数が高くなると分離が悪くなります。
 その為、ダブルスーパーが考えられましたが、今度は局部発振が2つある為にダイアルを回したとき、あちらこちらに受信機内部で発生する電波が入ってしまいます。


◇セット後部◇

左手前銅板のケースは自作のクリスタルフィルター


 さて、イメージ比を良くしたシングルスーパーを作るには3MHzあたりのクリスタルフィルターが必要となるのですが、手持ちのクリスタルフィルターを調べてみると5.2MHzと7.8MHzで少し高すぎました。
 いろいろ調べてみたところ「アマチュア無線の新技術 1969」から「無調整 ハイフレ.フィルターの実験」を見つけ、手持ちのジャンクからHC/18U型の3579.545KHzの水晶を見つけました。これはカラーTVから取り外し品です。


 ◇回路の概要◇
 周波数変換には、低雑音高利得の5極管ミクサーを使います。
 この回路の欠点は引き込みがあり、それを防ぐため非同調高周波増幅を付けました。
 しかし、抵抗負荷の非同調高周波増幅では、受信周波数が高くなると利得が無くなるので、高Gm管を用いてシリーズピーキングコイルを入れました。
 計算上では12MHzで約8倍となります。このピーキングコイルが上手く働けば利得は、抵抗結合の約2倍になります。
 中間周波増幅は、クリスタルフィルターの損失を見込み、6EH7の2段で利得の調整はカソード抵抗の増減です。
 IFTはアメリカ軍のARC5用2830KCを同調用コンの200PFを100PFに替えました。
 安価で、軽く、小型にする為トランスレスにしました。
 出力管に38を使ったので低周波の利得を増やすために6B8を使いました。
 普通のAVC回路では6B8のバイアス電圧がAVC回路に加わるのでDAVCにしました。
 整流は25Z5の半波倍電圧、発振回路のプレート電圧と高周波、中間周波増幅のスクリーングリッドにはゼナーダイオードを入れました。
 中間周波が3.5MHz帯なので中波の局部発振は約4-5.1MHzになります。この為、可変範囲がとても狭くなってしまいます。
 つまり、パディングコンデンサーの容量が小さくなり、調整が難しく、また短波との周波数切り替えが普通の2バンドの方法では発振が止まるので1回路スイッチが増えています。
 ダイアルは、周波数の書き込みが面倒なので微動ダイアルを使いました。トラッキングレス?用にアンテナ回路のトリマーは付けず、30PFのバリコンを付けました。それでもトラッキング調整は必要で、何とか±15PFの範囲に収まりました。


◇回 路 図◇


 ◇コイルDATA◇

 ※ピーキングコイルは9μH


 【感  想】
 ほんの少しのコンデンサーの容量の違いやコイルのインダクタンスの違いで、発振周波数範囲が大きく変化してしまい、中波の発振回路の調整が大変面倒でした。
 クリスタルフィルターは、短波においては分離が良くまたイメージが無いので快適ですが、中波では通り抜けがあり、強い電波は20KHz程度離れていても小さく聞こえ、その後目的の周波数に近づくと急に大きくなります。これは、フィルター後の利得が多すぎるのかしれません。
 使用したシャシのサイズは、縦 17cm 横27cm 奥行き16cmです。このケースを戴いた鈴木さんに深謝。


◇上 部 か ら◇


<2009.06.03>