ひとつの趣味として、今まで色々な真空管を使ってラジオを作ってきました。
それでもまだ見たことのない幻のような国産の真空管も存在していることは確かであります。 そのような中で製造後すぐに生産中止となってしまった球が手持ちに数本ある事を思い出しました。 勿論、当時の技術ですから、材質や性能は最期のMT管など比較すると劣るかもしれません。しかし、超小型のデジタルの時代に、このような球に灯を入れるのもまた楽しいものでもあります。 |
◇回 路 図◇
トランスレスの球ですが、B電源はトランスを用いてます。
このセットに使用した12GC5(3003)のシリーズは無線と実験の1948/4に新球として12WC5のシリーズと6WC5と共に載っています。
これらの球はアメリカのトランスレスGTと良く似ていますが、ヒーター電流が0.175AでIF用の12GR6(ソラ)(3002)はシャープカットオフ、12GDH3(3004)は単2極、出力の12GP9(3001)は5極管でプレート電圧100Vでは出力不足となり、200V程度が必要となります。 |
◇正 面◇
下の木箱は専用の箱になります。
従ってこのシリーズでラジオを作るには、ヒーターはトランスレスとして点灯出来ますが、B電源はトランスにより200V程度必要となります。
大変使いにくいレス球ですが、この1年後にはテンが100Vで働くビーム出力の300GB1(0.175A)を発表しました。しかし、この球はいまだに見たみたことがありません。 また、整流の30GK5(3005)にはパイロットランプ用のタップがありません。 |
◇セット後部◇
アメリカのトランスレス用GT管によく似ています。
このシリーズは使いにくいのか、あまり需要が無く、殆ど出回らなかったように思います。
1949/11の川松卸商報を見ると12GC5(520)12GR6(410)12GDH3(370)30GP9(420)30GK5(280)で計2,000円です。
同じマツダのSTは6WC5(400)6D6(245)6ZDH3(340)6ZP1(200)12F(100)計1,285円、そしてどちらもトランスが必要となり、安価で小型のラジオには向かないということもあってか売れませんでした。。 そして1950/12のマツダの広告には12SA7,K7,Q7,35L6,35Z5が出ていますが、1年早くトーヨーが12SA7のシリーズを発表しています。 |
◇使用した真空管一式◇
GT管によく似ています。
マツダのオリジナル箱入りです。
我が国ではGT管のレスラジオはあまり作られず、大量に作られたラジオは12BE6,12BD6(12BA6),12AV6,35C5(30A5),35W4でトランジスターに変わるまでの真空管ラジオとなりました。
これらのセットは、まだ世の中にゴロゴロしているので、殆ど作られなかった12GC5シリーズのレス球をトランス式で働かせることにしました。 蝉トランス式とでもいえば良いのでしょうか。文字が違うような気もしますが・・・・ |
◇ソラの後継版◇
有名な万能真空管のレスで、ソラ後継版にあたると思います。
このシリーズの配線図を見ると、B巻き線はオート・トランス式となっていますが、大型の鉄芯が手持ちにあったのでB回路は完全トランス式の200V/AC120mA(DC60mA)とパイロットランプと、マジックアイ用に6.3V/1Aを巻きました。
組み立てて働かせてみると、IF球がシャープカットオフの為、入力が大きいとプレート電流が殆ど流れず歪みが生じてしまいます。 アンテナ線を短くしていますが、どうもすっきりした音が出てきません。どうやらなにか小細工が必要なのかもしれません。 やはりなにか問題があって市販に至らなかったのかと感じるところもあります。 |
<2017.03.15>