ひょんな事から東芝51型というラジオが我が家に舞い込んできました。構成球を見ると12YV1-12YR1-12ZP1-24ZK2-B37が使用されたラジオです。
通常このようなトランスレス用の真空管を用いたラジオは放送局型123号と呼ばれていますが「東芝受信機51型」という名前だった為、私は戦後に作られたラジオだとばかり思っていました。しかし、届けられた現物を見て驚きました。 また、入手時はツマミが交換されていた程度で、外観の痛みもさほどなく、改造された様子もないという極上品でした。 |
◇入手時・・だそうです。◇
若い頃よく見かけたような格好の高1ラジオです。
古いラジオはホコリが蓄積してます。
古いラジオが手に入ると、どれどれと中を見たくなるのは当たり前のことではありますが、そのラジオの裏板を見ると試験表に15-12-25と印がありました。
つまり製造は昭和15年12月であり、作ったメーカーは東芝ではなく七欧と書かれていました。 |
◇貴重なオリジナルの裏蓋◇
昭和15年12月製造とあります。
製造元は七欧と書かれています。
もし、このラジオの裏蓋が失われていたら詳しいことは全く解らなかったと思います。このあたりの製造に関わる諸事情は岡部さんのHPに詳しく書かれています。
これらのことからNHK(当時は放送局はNHKだけでした)が「送局型123を制定する以前の試作品的なラジオで大変貴重な代物だと分かりました。 言い替えれば骨董ラジオとしてでなく、置物的な骨董品としても相応の品ではないかと想像できます。こんなことから、このまま飾り物にしようかと迷った事もありました。 |
◇原型のケースとオリジナルシャーシー◇
ネジが錆びていてやっとシャーシーを取り出しました。
球のソケットには良く球の名前が打ち込まれている例はありますが、このラジオではソケットに「マツダ 12YV1」とメーカーの名まで打ち込まれています。
付いていた球を見ると12YV1,12YR1が取り替えられており、12ZP1,24ZK2はベースにマツダの刻印のですから最初からのオリジナル球と思われます。 付いていたケミコンにもマツダとあり、当初からの付いていたものだと思われます。この容量は10/300V,20/150V,10/50Vと書いてあります。 |
◇当初付いていたと思われる球◇
全てマツダの刻印球で統一しました。
やはりラジオというものは放送が聞こえなくては面白味もありません。せっかくですから聞こえるようにしたいという欲望は押さえることが出来ません。
さて、51型の修理は、極力原形をとどめたいと考え容量抜けの平滑ケミコンは、ケースだけを利用して中身を入れ替えオリジナルのようにしました。 その他、補修に際してなるべく分からないように不良のペーパーコンデンサーをセラコンに交換し、抵抗の下に隠すようにしました。 |
◇当初と修理後のシャーシー裏◇
原型をとどめたくてもペーパーコン、配線材は劣化で使用不可
極力見えないように、でもちらり・・・
放送局型123号が実際に使われていた頃はあまり評判の良いラジオではなく、修理のときに電源プラグをどちらの向きにしてもシャーシに触ると感電しました。
ラジオ技術臨時増刊13号の「アマチュアのラジオ商業技術10ケ条」の中「君子危うきに近寄らず」に修理しても修理しても故障の続発する可能性ある受信機の最初に「例えば局型123号としっかり名前が挙がっています。 この感電や故障連続の要因として、両波倍電圧整流があり、球のカソードとヒーター間に高圧(内尾さんのHPでは200V以上となっています。)が掛かり、ヒーターとカソードのショートによって他の球を道連れにして断線を起こし、更にカソードの絶縁不良による雑音、ハムの発生が多々ありました。 |
◇ケースに貼られていた回路図等◇
パーツの一覧表らしきものも見えます。
◎あとがき◎
ただの古いトランスレスの高1と思っていましたが、このような貴重なラジオを頂いた鈴木さんに感謝しております。 |
<2015.08.22>