◇並四ラジオの試作◇

 この並四の「並」とは「上」に対して普通品という意味です。江戸前寿司では「特上・上・並」とありますので、当てはめてみるとよく理解できると思います。ただし、ラジオでは特上という例えはありません。強いて付けるなら軍用等の業務受信機を指すのかもしれません。
 他の云い方でいうと「松・竹・梅」ですか、いずれも使ってあるネタが異なるという点では共通しています。
 そして「四」は「4球」の四で、球の数になります。つまり、普通の球(三極管)を4本使ったラジオであります。正確にいうなら三極管が3本と整流に使う2極管が1本となります。
 この形式は、戦前から戦後まもなくの間、家庭用ラジオとして多数を占めていました。また、真空管は電極の数により呼び名があり、二極管を「Diode(ダイオード)」三極管を「Triode(トライオード)」四極管は「Tetrode(テトロード)」、五極管のことを「Pentode(ペントード)」などと呼ばれます。
 当時、五極管は高価であり、これを使用したラジオは高級機でした。それに対し三極管を使用したものは普通であったことから「並」と呼ばれるようになったようです。


◇製作した並4の回路◇

ナス管を使用した為、現在では並と呼べませんが並四です。


 私が知る限り、一番古い並四は球がUY-227,UX-226,UX -112A,KX-112Bで各段の結合は段間トランスといわれる低周波トランスを用いていました。
 最後はUZ-57,UY-56,UX-12A,KX-12FになりCR結合となりました。MT管時代になっても、このなごりがあってか並四コイルを用いたラジオを並三というように「並」が付けられていたようです。
 同調回路が1つしかないこのラジオは、ノイズ等、非常に賑やかになった現在のお空で使用すると感度不足や混信に悩まされる地域があるでしよう。
 このラジオは作るのが簡単な為、すこしひねった並四を作ってみました。


◇丸型のケースの並四◇

トランス結合ではなくCR結合、シャシの角もひねって丸くし、球はナスです。


 ひねりすぎたのかシャシも丸くなりました。というのは冗談で、普通は中身がなくなると捨ててしまうお菓子の入った入れ物です。昔風でいうとブリキ缶というのでしょうか。
 これを見て何か活用方はと、頭をひねったところ球をサークル状に並べたら面白いのではないかと考えました。
 使う球は入れ物のバランスからナス球を選定し、乗せるものは他に重たいトランス、それにコイル等です。
 ブリキ缶に、これを並べるのは0.3mm程度の板では強度が足りません。ここでもう一ひねりして、蓋の下に0.8mmのアルミ板を貼り付けて強度を出すことにしました。


◇スピーカーの取付加工◇

スピーカーは、このように取り付けました。使用したのは10cm


 SPは下向きに取り付けます。そのままでは音の出口に蓋をするようなものですから、缶の底には足を付けて少し浮かせてます。
 一応、無指向性となりますが、置き場所によっては高音が出にくくなる場合があります。
 電源トランスですが、これは第二次大戦で使われていた回転変流機から取り外したチョークコイルの鉄心に巻きました。
 また本来なら226と112Aの間は1:3のトランスを使いたいところですが、レイアウトを見ると電源トランスからの誘導が怖いので抵抗結合としました。
 バリコンはポリバリコンを使い内部に収め上部をスッキリさせます。


◇内部の様子◇

VRは感度調整用、音量調整にもなり便利です。


 完成後、どうしても224がハムを拾うのでシールドケースを付けました。これも缶です。
 ブリキ缶の大きさから見てもナス管がバランス的に良く見え採用しましたが、整流管のKX-112Bだけは非常に貴重品であり普段は12Fを使っています。
 その他の球は現在もアメリカ球が入手出来るとはいえ貴重なため、後に述べるように代用の球を使えるようにしました。
 また、以前に6F7使用の並四の時に感度調整(音量調整)を付けなかった為、かなり使いにくかったので今回は付ける事にしました。
 考えてみれば並四ラジオが実際に使われていた頃は、NHKだけでありラジオは1家に1台が普通でした。
 この為、音量調整はあまり必要が無く、どうしても必要な場合は同調をずらして調整していました。生活様式も多様化、電波も沢山の時代にはちょっとミスマッチかもしれません。


◇224のシールドケース◇

ハムを拾うため仕方なくナス管にシールドを施しました。


 前項でも述べましたが、高価なナス管を使うのはもったいないので代用球を作りました。
 224=24Bには3AU6を使いました。24BはG1が頭に出ている為、G1が頭に出ている不良球を使いました。これでも検波には無事働きますが、高周波増幅として使えるかどうかは不明です。
 226=26B 抵抗結合に使うなら簡単で3A4を3結にしてフィラメントは並列にし抵抗を直列に入れる。3B4なら3結にしてフィラメントは直列で使用可能です。
 112A=12A 5A6のフィラメントを直列にして3結にしG2は10Kを入れてPへ接続する。
 112B=12B 1005が適当ですが、高価な為0Y4の不良品をベースから外し、カソードは接続してある2本の線を外して5Vで点火します。逆耐圧は300Vとなっていますので180Vなら何とか耐えられます。
 整流管の代わりにシリコンダイオードを使うと電圧が高く出るため直列に抵抗を入れて対応します。
 24Bの代用品以外はベースにMTが取り付けられた状態の為、体裁が悪いのでいずれは不良球のガラスを上手くくり貫いて被せる予定です。


◇代 用 球◇

並四の為に作った代用真空管


 空き缶を眺めて何かできないかと考えてみたものの組み立ててみると想像以上の苦労がありました。
 そして、バランス的に良かれとナス管を使ってみたものの、良く考えてみればこれは勿体ない。という結論に至り、最終的に不良球の再利用ということになりました。
 余談ですが、不良とはいえSTなど大きな球は見栄えが良くて捨てるに捨てられないのが私の性分でしょうか。
 並四はいつでも組み立てられますが真空管は組み立てられないので少しでも長く共に居たいと思うところです。


◇正面から◇


 結論からいうと現在では並4とはいえません。特上4と云うべきでしょうか・・・・。

<2011.01.24>